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デジタルネイティブと反復

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これからはますますデジタルな世の中だから、デジタルネイティブが重要なんて話を未だによく耳にする。リテラシーの育成みたいなことを考えながら苦慮しているけど、人生の一番の基本は倫理だ。道徳が促すような正しさは必須ではないが、僕らが生きていく中では、ある程度時代に沿った形の、でもそういう社会的影響を受けても変わらない根源的な部分ももっている共通観念を必要とする。それが倫理だ。

今ではスマートフォン、タブレットといった電子端末を子に与えている人が多い。無尽蔵にやってくる膨大な情報群、手が出せさえすればそれらを簡単に手にすることができる。そこにも問題は多く含まれているが、今回はもう少し単純なことに目を向ける。

電子データに触れるときの体感について考える。得られる情報は様々ではあるものの、触覚としては均一なものしかくれない。このような手ごたえの無さに加えて、見過ごしたり間違えたとき好きなように戻せることは、便利ではあるが問題も含んでいる。戻れないことが当たり前でなかったり便利であることすら意識できないかもしれない。そしてそれと同様ではないことが辛くなることも問題だ。

少し拗れれば繰り返すことの意味がわからなくもなる。僕らにとって、反復ほど実感をくれるものはそう多くない。学校で教わることは人生にとって無意味だ、というような考えを持っている人もいるが、それは大切なことを見逃している。教わる内容の如何に関わらず、様々なことについて反復して何かできるようになったり、何かについて深く認識することが一番大きな成果で、それができる場所が学校である。そこを見誤ると反復して得られるものに対して意味を求めたりする。

また、反復がくれるものは具体的な知識や答えではなく、世界にはどういうことがあるのかという多くの実例から学ぶ、人生で訪れる出来事たちに応じるための知恵である。そういう知恵はすぐに明快な解決や答えをくれることはないが、生きれば生きるほど溜まっていき、ある地点から現状に応じる以上の能力として予測するという能力をくれるようになる。反復が無いまま知恵が根付くことはないことを思えば、繰り返し同じことをする意味を問う子に対し、叱ってやることの意味は大きいし、堪え性を養う意識はとても大切だろう。

堪え性が無い状態。少し極端に想像してみると良い。毎日の生活から積み重ねられて対処を求めてくるあれこれに応じなければならない現実に対し、面倒だと判断する気持ち。毎朝目覚め、代わり映えのない食事をし、同じ経路で同じ場所へ行き、同じことをして家へ帰り休み眠る。もう少し具体的に例えれば、社会に出て、製造工場での流れ作業、レジ打ち、梱包、草抜き、大工仕事のような細かな工程の膨大な積み重ねを前に途方に暮れ、気が負けてしまうようなこともあるだろう。そんなことに負けてしまう人生は幸せに向かうことがあるのだろうか。その辛い将来はスマートフォンから始まっているのかもしれないと思えば、我が子が望むことであったとしても、それを諌めるのが親の役割である。子の願望がより具体性を帯びるなら、頃合いをみて渡してあげるのが子育てではないだろうか。

iPadを渡しておけばYoutubeをみて静かになると、その有用性を認めているのはわかる。だが、怒鳴って叱りつけるほど静かにしなくてはいけない場所へわざわざ出かける理由とはなんだろうか。離婚の多いこの頃だ、シングルマザーの方かもしれないし、追い詰まった状況もないとは思わない。しかし前にも少し触れたことだが、ベビーカーを押す母親が未だに目につく。歩けるだろう手足を持った子をそこへ押し込めて母親本人はiPhoneで何かをずっと見ている。そういう光景を目にする機会が本当に多い。母親がここまで我が子を見なくなったのは大きな問題だろう。押し込めざるを得ない状況が想像できるのに、なぜ出掛けるのだろうか。1年中出掛けないのは息が詰まるだろう、息抜きは必要だ。どうしても行かなくてはならない用事だってある。だが、そういうのは特殊な状況で、ある程度の我慢が必要な期間などたかだか3〜4年ほどのことである。しかも、親と子にとって最も密接で輝かしい3年間なはずである。社会に対して、子と過ごす時の不便を訴えるということは、その状況を特殊なものではなく難のない日常にしたいと言っているように聞こえる。難のない日常にできれば、望むままの行き先で子は大人しく(もしくは安全に大暴れ)して、親はiPhoneを見るのだろう。それは子のためなんだろうか。親の都合で子をコントロールしたり、子を盾にとって快楽を手軽に得ようとしているだけ、ということである可能性が僕の頭からはなかなか離れない。

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