昨年の11月に聞いた深澤さんの話の続き。深澤さんの話を聞いた後、僕が学生時代に学んだ「形態は機能に従う」「機能は形態に従う」ということについて少し考えていた事がはっきりしてきました。この二つは、機能と形態という二つの大きな要素がものを構成している的な考え方です。
まずそれぞれの考え方を僕なりに定義・説明します。
■ 形態は機能に従う
ものをつくるにあたって「こうなればいいなぁ」という要望(機能)が生み出され、その機能を実現するための形態を考えていくのが「形態は機能に従う」です。こういうつくられ方をしたものの例を挙げます。
・今年のGOOD DESIGN AWARDを受賞したインスリン用注射針
「痛みを感じたくない」から「針を細くした」ものです。
・トンネル
「この山の反対側に遠回りせずに行きたい」から「構造強度の強い卵形の穴を掘った」ものです。
・新幹線
「遠くに短時間で移動したい」から「とても早いスピードが出ても安定した走行が可能な形にした」ものです。
■機能は形態に従う
色々と考えてみたところ、ものが既に目の前に出来上がってしまっているため結果的に「形態は機能に従う」と捉える事も可能な場合があり、こっちを説明するのは難しいのですが、まず例を挙げてみます。
・ぬいぐるみ
「動物の赤ちゃんってかわいいじゃんと思った」から「それっぽくつくってみた」ものです。
・ポスト
「僕ら(郵便局の人)のテーマカラーは赤だ!」から「僕らの装置は赤色でつくった」ものです。
・王座
「僕は偉い」から「誰も見た事の無い形で豪華にした」ものです。
この三つについては、それぞれどういうものだ?と考えてみたところ、ぬいぐるみには寂しさを紛らわす機能や良質な睡眠を生む可能性がある機能が備わっているかもしれないことがわかったり、ポストはゴミゴミした街の中にあっても目立って良いじゃんと思えたり、王座は特別な椅子に座っている自分は特別だと思えるようになったりと、いわゆる機能と言えそうなことが備わっていることが後になってわかっているんだと思えました。つまり、「何か良いんじゃないかなぁ」という気持ちからできたものだけど、結果として新しい機能を生み出しているのがこの考え方なんじゃないかと思いました。
って書くと、「『機能は形態に従う』理論によって新しくつくられたものが、『形態は機能に従う』理論によって洗練されていく。」のかと思えたりもしましたが、たぶんそれだけじゃないっぽいです。「形態は機能に従う」から新しくつくられるものもあるんでしょう。でも「機能は形態に従う」だけでは洗練はできないものなのかもしれません。(そもそも洗練なんてことが必要ないものもありそうだし)
でも、全く新しいものをつくりたいとき、「機能は形態に従う」で突っ走ればどこかに出口が現れるんだな!とは思えません。両方の思考を自分なりに理解した上で、1つの思いつきに対して(どちらが先とは決めず)交互な思考で思いを巡らせる事が大切なんだろうと思いました。で、それをやっているのが深澤さんなんだと思います。彼は、「形態は機能に従う」から生まれたっぽい既にあるものにも、「機能は形態に従う」をぶつけてみて「お、こっちの方が良い!」って思えることを見つける中からものをつくっているように感じます。そして、自分を含め人がニヤリとできるかどうかが、彼が思う「お、こっちの方が良い!」っていう基準になっているのだと思います。(本心から尊敬の念を込めて)彼は本当に幸せな人です。
僕は、この考察をしてみる前から、機能と形態をそれぞれにわける事そのものが難しいんじゃないかと考えていました。つまり、どこまでが機能で、どこまでが形態かという点です。例えば、ポストの赤い色は形態でもありますが、見つけやすいという機能ともとれます。では、どちらがどちらに従っているのか、見つけやすいから赤くしたのか、赤くした結果見つけやすくなったのかということです。これはどちらも可能性があると思い、実際につくった人がどちらを意識していたのかが重要なことでもあり世間が決める事でもあります。
機能も形態も人間がつくりだした曖昧だけど明確な括りにすぎず、そこだけにとらわれてものをつくる事はあまり意味が無いと感じていました。それらとは別軸で、人間の本能というか、人間を含めた大きな意味での自然というものが、はっきりとは見えていないけど必ず作用していて、それをつかんでものをつくることをバックグラウンドで必ず考えていないと、今の自分からは脱せないと感じていました。今回の考察を通してその考えは案外はずれてはいないなと思えました。
この考察で、こういうことなのかもと思ったのはこんな感じです。
・機能というのは、何となく良いことが具体的に何であるかを人間が知った結果である。
・機能には数学と同じで1もあれば0もある。0は”有る”ものの量が無い状態を表している。
・形態には数学でいうところの1もあれば0もあるのだけど、無というものがある。
・「形態は機能に従う」理論でできたものは、いわゆる便利なものである。
・「機能は形態に従う」理論でできたものは、いわゆる便利なものもある。
・「形態は機能に従う」も「機能は形態に従う」も大切なプロセスの一つである。
ちょこっとメモ
・色々調べているうちに面白そうなことが書いてあるなと思ったページはここ。
・極端な気がするけどちょっと見てみたいから本を買ってみようと思ったページはここ。
・何だか面白そうな考えと動きかもと思ったページはここ。